ついに発表されたFrank Oceanの新作。新作にまつわる動きを簡単にまとめます。
2016年は全世界がその新作を首を長くして待っている2組のアーティストが新作を発表した年でもありました。1組目は以前の投稿でも書いたザ・アヴァランチーズ、そしてもう1組が本稿の主人公フランク・オーシャンです。このフランク・オーシャンの新作は間違いなく2016年におけるポップミュージックの中心にある作品の一つです。ただ、新作を待ち侘びるせいか、リリースまでに様々な噂が飛び交い、ここ日本ではどんな状況になっているかいささかわかりづらい状態となっています。そこでフランク・オーシャンの新作にまつわる動きについて少し整理したいと思います。
フランク・オーシャンはアメリカ出身のR&Bシンガー。2012年発表のデビュー作『Channel Orange』が世界的にヒットし、2013年にはグラミー賞で2冠を達成しています。タイラー・ザ・クリエーターが主催するOFWGKTA (Odd Future Wolf Gang Kill Them All)にも参加しています。
整理すると今回リリースされた新作は大きく2つ。1つ目は『Endless』と名付けられた作品でこれはヴィジュアルアルバムという映像とセットになった形式の作品でApple Musicにてリリースされています。
もう1つは『Blonde』というフルアルバム。こちらも現在のところフィジカルでリリースはなくitunes、spotifyでリリースされています。
「あれ、どっかでフランク・オーシャンの新作って『Boy's Don't Cry』って書いてあった気がするけど・・?」という人もいるのではないでしょうか。結論を言えば、『Boy's Don't Cry』は特定の作品の名前ではなく、『Endless』『Blonde』の2作を含むフランク・オーシャンの新しいプロジェクトの名前でした。フランク・オーシャンは件の2作にアメリカ4都市でプロジェクト名を冠したポップアップショップでオープンし、そこで同名のzineを配布しています。zineの内容についてはこちらのサイトで詳しく紹介されていました。
しかし、混乱するのも無理はありません。実際のところ、フランク・オーシャンの新作が『Boy's Don't Cry』という名でリリースされるという情報は『Endless』『Blonde』が発表された2016年8月の段階でも報道されており、その動向を追っていたほど一瞬混乱したのではないでしょうか。今回のBoy's Don't Cryプロジェクトの動向を時系列でまとめた記事がピッチ・フォークにポストされており、こちらを読むとその動向の激しさがわかります。
これを見ると前作『Channel Orange』がリリースされた翌年頃から既に新作のことが語られ始めていることがわかります。そこから2016年になるまでリリースされなかったのですから、ファンとしては本当に待望の新作になったというわけです。
それにしてもビヨンセといい、カニエといい、海外ではCDというリリース形態の制約から解放されたことによって、作品のリリース形態が非常に多様化していると思います。この点、日本とちょっとギャップがあって、動向を積極的に追っている人以外はわかりづらいかもしれません。ただ、正直僕は海外のこのダイナミックな動きに憧れます。アートとしてどう表現するのが良いか、より広い選択肢から選べる時代になっていて、海外のアーティストは積極的に実験しているように見えます。フランク・オーシャンの作品はまだ聴き始めたばかりなので、これからゆっくり楽しみます。音と映像を使って彼が何を表現しているのか、そこで語られていることは2016年のポップシーンにおいて重要な意味を持っているに違いありません。